「トゥルー・グリット」の感想

感想

私はこの映画を観るまで西部劇に苦手意識を持っていました。二丁拳銃とかテンガロンハットとか、荒野を転がる草とか、早撃ちとか、そういったザ・西部劇という感じの映画をきちんと観たことが無かったにもかかわらず、なんとなくのイメージで西部劇は面白くないと決めつけていたのです。この作品はコーエン兄弟が監督であったことと、前評判であまり西部劇っぽくない物語だというのを聞いていたので、チャレンジしていました。ストーリーはとてもシンプルで、父親の仇を取るために少女マティが立ち上がり、飲んだくれだけど腕利きの保安官コグバーンと真面目だけどどこか頼りないレンジャーのラビーフを仲間にし、敵のチェイニーを倒すための旅にでるというものです。敵のチェイニーはいかにも小物感が漂うギャングで、チェイニーの親分であるネッドも、どこか頭が悪いオーソドックスな敵役です。そんななんてことはない面子を、それぞれを演じる俳優たちが個性的で深みのあるキャラクターへと変化させ、観客を飽きさせない演技を披露しています。

主人公・コグバーン

この作品は前編を通して少女マティの目線で語られますが、主人公はマティではなくコグバーンです。コグバーンを演じたジェフ・ブリッジスは、こういうダメ人間の役が本当に似合いますね。コーエン兄弟と共演した「ビッグ・リボウスキ」で演じたデュード役も怠け者でダメ人間な役でした。冒頭から裁判で人を躊躇なく殺す人間だと分かりますし、でも確かに腕利きではあるというのも分かります。この辺のキャラクターの説明の仕方も上手いなと思いました。ちょっと保安官ぽくないダークな感じがする人ですが、それもそのはず、彼自身も元は犯罪者なのです。コグバーンは正確には保安官ではなく、保安官補という役職で、無法地帯であるインディアン領との境目にあるフォートスミスの町で、無法者たちがインディアン領に逃げ込まないように見張る役目などがあるわけです。ですから凶悪犯と直接対峙することが多いので、保安官補の役職はほとんどが元犯罪者だったそうです。最初は頼りがいのありそうなところを見せておいて、段々とこの人は本当にだめな人だと観客に思わせ、コグバーン自身が語る過去の栄光も、「はいはい、うそなんでしょ?」とうんざりさせておいて、最後にはそれが嘘でなかったことを証明してくれるところはカタルシスをおぼえました。4対1で戦って次々に敵を倒していくところはただただかっこよかったです。また、あんなにも簡単に人を殺してしまうコグバーンが、蛇にかまれたマティを助けようと必死になる様子には涙をこらえきれませんでした。憎まれ口を叩きながらも、マティの勇気を認め彼女を守ろうとしてくれる姿に感動しました。ブラッキーを銃殺したのも彼なりの優しさだったのでしょう。2人の人間を乗せて限界まで走った馬がとうとう倒れ、もう起き上がれないほどになってしまった馬は、荒野に捨て置かれたらそのまま野垂れ死んでしまいます。そうなることが分かっているから、なるべく苦しまないで済むようあの場で射殺したのでしょう。そこまで頑張って走ったブラッキーの最後は切ないものでした。ブラッキーが力尽きると、コグバーンは自らマティを抱きかかえて走ります。本当に一生懸命に一つの命を助けようと走るコグバーン。胸が熱くなりました。

生意気な小娘・マティ

もう一人の主人公とも言うべきマティは、とても賢い女の子です。マティ役のヘイリー・スタインフェルドは、1万5000人の候補者の中から選ばれた新人で、当時たったの13歳だったそうです。決して可愛いとは言えない顔立ちに、長い髪をお下げにして大人たちにも全く怯えずに交渉していく姿は、生意気でこまっしゃくれた娘という印象を与えられますが、どこか憎めないところがあります。大人びているけれどやはりまだ子供であり、彼女の信念や賢さの影に見えるちょっとした子供っぽさがとても可愛らしく、素直に応援したくなる女の子でした。これは脚本が魅力的であるのももちろんですが、やはりヘイリー・スタインフェルドの演技力の賜物だと思います。彼女でなければ飲んだくれのダメ人間であるコグバーンを動かすことはできなかったでしょうし、臆病で小心者のラビーフが300mのロングショットを決められたのも彼女がいたからだと思います。「本当の勇気」というタイトルのこの映画ですが、彼女の中には沢山の本当の勇気が漲っているのだなと感じました。自分の手で父の仇を討つこと、危険な冒険に出る事、濁流の川を馬と一緒に泳いで渡ること、敵に一人で立ち向かったこと。強い信念と勇気があったからこそできたことだと思います。

小心者・ラビーフ

若くて誠実なレンジャー、ラビーフはマット・デイモンが演じました。マット・デイモンと言えば「ボーン・アルティメイタム」シリーズが有名ですが、本作での彼は終始脇役に徹しています。コグバーンのダメ人間っぷりと比べるととても真面目で好青年なのですが、なんとなく頼りない感じがするというラビーフの人柄をとても上手に演じていました。コグバーンとの銃撃対決ではあっけなく負けてしまいますし、2人の待ち伏せ作戦を台無しにするタイミングで登場してしまったりと、観客が思わず「もっと頑張れよ!」と言いたくなるくらいでした。しかし、彼も最後にはきっちりと見せ場を作り、コグバーンの危機を救うという大活躍を見せてくれます。ラビーフは終始血を流していて、歯が欠けたり銃で撃たれたりと散々な目に遭うのですが、それでも死なないタフさが面白かったです。彼の場合はコグバーンとは違って消息不明のまま物語は終わってしまいますが、私としてはどこかで元気に生きていて欲しいなと思いました。

復讐の代償

マティは復讐を果たしますが、同時に毒蛇に噛まれて片腕を失ってしまいます。これは冒頭にナレーションで語られる「代償なにしは、この世は何も成立することはない」という言葉が表すように、自らの手で父の仇を殺したことへの代償です。コグバーンもまた、片目を失っており、なぜ片目を失ったのかというストーリーを語る中でマティは「罪への代償だ」と言います。マティが蛇に噛まれた後、馬に乗せられて運ばれるときに観るのは、マティの復讐のために死んだネッドやその手下たちの死体です。意識が朦朧とする中でマティは、自分が復讐のために払った代償を知るのです。「本当の勇気」とは、自分がしてきたこと、これからすることに対して責任を持ち、代償を払う覚悟をするということなのではないかと思います。多くの人を殺してきたコグバーンもまた、裁判沙汰やアルコールに手を伸ばしてしまう毎日、落ちぶれた生活と、その罪の代償を払いながら生きているのです。マティは左腕を失い、愛馬を失い、結婚して子供を産むことも諦めました。それでも一人で強く生きている彼女は、自分のしたことに決して後悔をせず、自信をもって生きているように思いました。コグバーンの最期には間に合いませんでしたが、自分のそばに埋葬することでずっと一緒にいられます。そして多くの死体が打ち捨てられていた時代に、マティによって丁寧に埋葬されたコグバーンの遺体。これはコグバーンが一生懸命にマティの命を救おうとしたことへの神の慈悲だったのではないかなと思いました。

まとめ

素直に楽しめるとても面白い映画でした。西部劇が苦手だった私でも楽しめるあまり西部劇っぽくない映画で、でも馬や二丁拳銃やインディアンなど西部劇の王道はちゃんと捉えていたと思います。ストーリーは単純明快で、先の予測も簡単ですが、盛り上げ方が上手く、淡々と運ぶ展開の中でも俳優陣の演技で楽しませてくれたり、洒落たセリフが出てきたり、個性的な登場人物が出現したりと、最初から最後まであっと言う間という感じがしました。森の中や町の風景など、映像がとても綺麗でした。特に最後の、満点の星空の下、荒野を駆けていくというシーンはとても幻想的でした。西部劇と言うよりは少女の冒険活劇であり、いつか子供が出来たら一緒に観たい映画になりました。アクションシーンは少ないながらもきっちりと見せ場が作られていますし、どんな人でも楽しめる映画だと思います。仕事で疲れた時、ストレスが溜まったときなどに観ればスッキリすること間違いなしです。

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本当の勇気を示せ!~映画「トゥルー・グリッド」~