監督:コーエン兄弟

映画「トゥルー・グリッド」で監督を務めたジョエル・コーエン、イーサン・コーエンは実の兄弟で、共同で映画製作に携わっており「コーエン兄弟」として広く知られています。代表作は「バートン・フィンク」、「ファーゴ」、「ビッグ・リボウスキ」、「ノーカントリー」などで、「ノーカントリー」ではアカデミー作品賞・監督賞も受賞しています。

プロフィール

アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス出身。兄のジョエルは1954年11月29日に、弟のイーサンは1957年9月21日にミネアポリス郊外のセントルイスパークで生まれました。父親のエドワードはミネソタ大学で経済学を、母親のレナはセントクラウド大学で美術史を教えていました。兄弟の上にはデビィという姉がいます。少年時代から兄弟は読書や映画鑑賞を趣味としていました。ジョエルが貯めたお金で8ミリ映画撮影用の機材を購入し、近所で仲間を募って映画を撮り始めたこともありました。この頃製作した映画には、当時兄弟の好きだった映画のリメイクの他に、ヘンリー・キッシンジャーを主人公にしたオリジナル作品もあったそうです。2人はマサチューセッツ州のバード大学サイモンズロック校を卒業し、ジョエルはニューヨーク大学で映画製作を学びました。一方イーサンはプリンストン大学で哲学を学びました。ニューヨーク大学を卒業したジョエルはアシスタントとして映画やミュージック・ビデオの制作現場で働くようになります。ジョエルは映画監督のサム・ライミと知り合い、彼が監督したホラー映画「死霊のはらわた」の編集助手となりました。2012年現在もサム・ライミはコーエン兄弟の友人として公私ともに親密な交際を続けています。

本格的な映画製作

このころ、プリンストン大学を卒業したイーサンが、ジョエルの住むニューヨークを訪れてきます。兄弟は共同で脚本の執筆を開始し、後にそれを彼ら自身の手で映画化した処女作「ブラッド・シンプル」を発表します。この映画は低予算での製作ながら、完成度の高いスリラー映画として好評を博しました。この作品で兄弟はインディペンデント・スピリット賞の監督賞を受賞し、一躍インディペンデント映画界で注目される存在となりました。この後2人はハリウッド大手スタジオの20世紀フォックスと契約します。そして20世紀フォックスからのバックアップを受けて「赤ちゃん泥棒」、「ミラーズ・クロッシング」、「バートン・フィンク」と言った作品を次々に公開し、そのどれもが話題作となりました。特に「バートン・フィンク」は同年度のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞の主要3部門を制覇しコーエン兄弟の名を世界に広めました。その後も様々な作品を世に送り出しており、ハリウッドスターを数多く起用し、巨額の製作費を掛けた「未来は今」では興行的に惨敗を喫したものの、捲土重来を期した次作「ファーゴ」は批評家たちに絶賛され、兄弟に初のアカデミー賞脚本賞を齎しました。海外での評価も高く、この作品で2人は二度目のカンヌ国際映画祭監督賞を受賞しています。「ビッグ・リボウスキ」は公開当時は興行的にも批評的にも微妙な評価だったのですが、現在ではカルト映画として一部の熱狂的なファンから絶大な支持を受けています。

2000年代の活躍

2000年にはジョージ・クルーニー主演の「オー・ブラザー!」のサウンドトラックが700万枚を超える売り上げを挙げ、話題となりました。翌年の「バーバー」では往年のフィルム・ノワールを彷彿とさせる白黒映画の製作に挑戦し、「バートン・フィンク」、「ファーゴ」に続き三度目のカンヌ国際映画祭監督賞を受賞しました。その後の「ディボース・ショウ」、「レディ・キラーズ」も興行的に成功をおさめ、批評家たちからの評価は高くとも一般受けはしないという兄弟に貼られたレッテルを返上する活躍を見せました。さらに2007年の「ノーカントリー」では作品賞を含むアカデミー賞4部門を受賞し、批評家たちからは「ファーゴ」に匹敵する傑作だと賞賛されました。この作品は全世界で1億6000万ドルを超える興行収入を挙げ、コーエン兄弟のキャリアにおいて最大のヒット作となりました。翌年に公開された「バーン・アフター・リーディング」も全米興行収入初登場1位という大ヒットを記録しています。さらに2010年に公開された「トゥルー・グリッド」はチャールズ・ポーティスの「勇気ある追跡」を再映画化した作品で、興行収入は1億6479万ドルとなり「ノーカントリー」を凌いでコーエン兄弟の最大のヒット作となりました。

コーエン兄弟の作風

コーエン兄弟製作映画では、「ディボース・ショウ」まで便宜上、監督・脚本にジョエル、脚本・製作にイーサンがそれぞれ別個でクレジットされていましたが、実際はどちらも兄弟の共同作業であり、「レディ・キラーズ」からは監督・脚本・製作全て兄弟の連名となっています。コーエン兄弟の作品はコメディ色の強いスリラー映画、またはスリラー色の強いコメディ映画が多く、特にユダヤ的な笑いを用いたものを得意としています。作品のテーマに犯罪、特に誘拐や恐喝を取り扱うことが多いです。基本的に兄弟が製作する映画は彼ら自身が書き上げた脚本に基づくものなのですが、物語の大まかな枠組みとして既存の文学作品などからモチーフを借りてくることも多いです。特に兄弟のハードボイルド小説への傾倒は顕著で、「ミラーズ・クロッシング」ではダシール・ハメットの「ガラスの鍵」や「血の収穫」を、「ビッグ・リボウスキ」はレイモンド・チャンドラーの「大いなる眠り」を、「バーバー」はジェームズ・M・ケインの「殺人保険」や「通瓶配達は二度ベルを鳴らす」をそれぞれ参考にしています。「オー・ブラザー!」ではギリシャの古典叙事詩「オデュッセイア」の翻案がなされました。技術的な特徴としては、移動撮影や複雑なカット割りの多用が挙げられます。また、兄弟は彼らの映画にしばしば特定の俳優たちをきようすることでも知られています。スティーヴ・ブシェミ、ジョン・ポリト、ジョン・タトゥーロ、フランシス・マクドーマンド、ジョン・グッドマンらが「コーエン組」として知られていますが、近年では彼らの出演機会は減少しつつあります。

コーエン兄弟の監督作品

  • 1984年「ブラッド・シンプル」
  • 1987年「赤ちゃん泥棒」
  • 1990年「ミラーズ・クロッシング」
  • 1991年「バートン・フィンク」
  • 1994年「未来は今」
  • 1996年「ファーゴ」
  • 1998年「ビッグ・リボウスキ」
  • 2000年「オー・ブラザー!」
  • 2001年「バーバー」
  • 2003年「レディ・キラーズ」
  • 2006年「パリ、ジュテーム」・・・パリをテーマにしたオムニバス映画。
  • 2007年「それぞれのシネマ」・・・映画館をテーマにしたオムニバス映画。
  • 2007年「ノーカントリー」
  • 2008年「バーン・アフター・リーディング」
  • 2009年「シリアスマン」
  • 2010年「トゥルー・グリッド」
  • 2013年「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」
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本当の勇気を示せ!~映画「トゥルー・グリッド」~